【トートバッグ付き】高木康行『植木』
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【トートバッグ付き】高木康行『植木』

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2015年にフランスの出版社「iKi Editions」で刊行された『植木』は、刊行されるや否や瞬くまに完売しました。ヨーロッパにおけるガーデン文化と江戸時代から庶民の中に広まった植木文化は似て非なるものとしてヨーロッパで愛されました。そこには植木文化が持つ、社会地理学的要素にヨーロッパの人々が共感した要因だと推測されます。植木を介して、ご近所同士がコミュニティーとして機能して、行政までをも動かす大きな力になったことが信じられないと言う。 高木は人間と自然界の関係性をテーマに作品を発表してきた写真家であります。長く住んでいたニューヨークのビオトープに興味を持ち始め、マンハッタンのビル群の隙間に現れた箱庭を見て、東京の下町の植木を思い浮かべたに違いありません。一方で仕事で訪れたブラジルのアマゾンで見て、金欲の為に崩壊されていく自然を目の当たりにして今回の「植木」プロジェクトを遂行することを高木は考え始めたという。 今回の写真集『植木』は東京の様々な住宅街を歩き、家の前に立ち並ぶ植木鉢を撮影した作品を纏めたものです。写真集の作りは日本の伝統的な和綴じで製本されています。テキストは日本文化に精通しているフランス人のフィリップ・ポンズさん、写真集のデザインはフランスの大手新聞「ル・モンド」の週刊誌「M ル・モンドマガジン」を立ち上げ、数多くの受賞を受けたエリック・ピヨーさんです。日仏合作の写真集と言えるでしょう。微力ながら、日本とフランスの文化向上のための一翼を担う写真集となることでしょう。 ステイトメント/Statement 植木: 高木康行 人間と自然界の関係性を撮ることが、この25年ほど僕のテーマである。都会っ子の僕は、自然の奥深さにいつも魅了されていたが、自分には無縁なのかもしれないと感じていた。そのすべてが変わったのは、ブラジルに住んだ半年の間にその地で経験したことや、アマゾンの熱帯林に僕を導いてくれた人々によってである。むせかえるような香り、生い茂った樹々、信じられないほど濃密な自然に、僕は圧倒された。そこには人類が地球で引き起こす問題のすべてがあった。そのほとんどが土地の所有権をめぐる権力争いの類や森林破壊、膨張する人類が原因であることに僕は気づいた。 僕が22年間暮らしたニューヨークで関心をもったのは、棄てられた土地や、コミュニティガーデンだった。都会のジャングルにわずかでも緑をもたらす一画の土地だ。そういう空間で草木は文字通り、オーガニックな形で存在した。いずれも最終的には草木が空地全体にはびこり、錆びついた放置車などがあれば覆い尽くしていた。近隣住民が丹精込めて手入れをするコミュニティガーデンは、都市生活者にコンクリートの喧噪から逃れることのできる、ひとときの癒しを与えていた。 東京で僕が十代半ばまで育った場所は、現在住んでいる場所でもある。そこでもコンクリートはしぶとく成長し続けているが、自然も負けてはいない。ビルや住宅が建ち並ぶ界隈の路地裏には軒並み植木鉢が並べられ、街路に庭や緑の空間が出現している。この「人間がつくった自然」は愛好家や地域の人々が世話をし、育てている場所だが、たいていの場合、現代の開発で自然が損なわれた場所だ。そして開発の結果、我々は伝統的な生活様式からますます遠のいていく。 日本人は自然との関係性をつかさどる儀式の長い歴史をもち、それらは芸術の中に表現されている。手入れの行き届いた日本庭園、生け花、和歌や俳句、絵画や盆栽などである。季節ごとに自然を愛でる行為は現代でも親しまれている。歴史を通じて多くの自然を題材にした文学が多く生み出されてきたが、そのほとんどは、ほんの一握りの人々がたしなむ芸術であり、新しい日本庭園はほとんど作られていない。 江戸時代は大名たちの間に和平が築かれ、ようやく国が統一された時代だ。武士はこれまでと違う生き方を探しはじめた。植木鉢が流行り出したのもこの頃で、人々は気に入った植物を互いに分け合うようになった。今でも、家の前に飾られた植木鉢はコミュニティに美意識とつながりを生み出している。植物には人々を結びつける力が備わっている。 今から100年後の世界を想像する。未来の人々が我々の時代に思いを寄せるとき、人間と自然との結びつきを感じるのは、生け花や盆栽よりもむしろ自由奔放な路地裏の植木鉢のほうではないか。コミュニティ、人々の集まりが主導する自然環境、そこに自然と人々の共有経験が一体化している。コミュニティはで、都会生活の付属物すなわち自由奔放の象徴である植木鉢は、巨額の資金が投じられる開発で一掃されてしまうリスクに常にさらされている。この自然を分け合うやり方もまた消滅してしまう前に、歴史書として遺す必要があると僕は信じる。僕はこの本を植木と名づけた。