




著者:金玖美
デザイン:尾原史和
発行:株式会社ブートレグ
印刷・製本:株式会社八紘美術
発売日:2019年3月29日
判型:W220mm×H286mm
ページ:96ページ
製本:ハードカバー
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2019年3月29日にBrexit ̶ EU離脱へ向かおうとするイギリス。
政治家や財界人などの要人に焦点が当たりがちではあるところ、市井の人々にフォーカスを当てた写真集である。
4、5歳の頃に姉と繰り返し読んでいた本の中に出てきた、イギリスの地名にずっと惹かれ、いつか行ってみたいと思いを馳せた。
空想の中で惹かれていた英国へ、20歳の時に初めてひとりで訪れる。
その10年後、暫時居住することになり、そこは私にとってもはや幻想ではなく、現実の世界となった。
渡英後すぐに始めた家探し中に見つけた楽しみ。
部屋の内見をしながら、人々の生活を覗き見る。写真を撮る。
そして一緒に暮らしてみる。
国境をも超えた、全くの他人同士の暮らし。個々の部屋に鍵はない。
様々なルーツを持つ移民や、性差を超えた男女たち。
単身者、カップル、家族、・・・。
ちょっとシャイでポリティカル。そして温かく、無干渉。
2016年のBrexitをめぐる国民投票後、30万人もの移民がすでに英国を去ったという。
残留の一票を投じるために、家族を守るために、英国籍に変えたドイツ人男性。
金があればEU離脱なんてどっちでもいいと言う黒人青年。
不法占拠を続け、その暁にフラットを自分のものにした、イギリス人画家。
初めて会ったその日に、「家で子供を産むから写真を撮りに来ない?」と持ちかける妊婦。
EU離脱というより、日々の生活が心配だと嘆く若きシングルマザー・・・。
これらは2004年から2018年までの間、ほぼロンドンで撮影しており、国民投票後の2016年以降はドーヴァー、マンチェスターへも足を伸ばした。
自身の私的なドキュメンタリーから生まれた1枚1枚の写真に潜む、愛すべき他人たちのストーリーを想像していただければ幸いである。
2019年3月29日を目前に、未だ混沌としている英国。
Brexitが引き起こす変化が移民を淘汰したり、この多様性に制限を加えようとしていることを憂慮している。私が経験したかつてのこの英国での情景を、決して忘れはしない。